金峰山-瑞牆山荘から

1年前の8月、伊勢原の日向山に登ったのをきっかけに始めた山歩き。今ではほぼ毎週のように山に出かけているが、未だ日帰りの山しか経験していない。ちょうど1年になったのを機に、かねてより念願だった山小屋泊まりを体験しようと山梨県と長野県に跨る金峰山(2,599m)に登ってきた。(2010/8/6〜7)

八王子06時29分発の松本行き普通列車に乗り韮崎駅に08時28分に着く。駅前で瑞牆山荘行きのバスを待っていると、隣に並んだ人からタクシー相乗りの誘いを受けた。4人揃えばバス代と同じ1人2,000円で行くという。これ幸いと一つ返事で応じた。聞けばここでは相乗りは半ば常識らしい。

09時30分に瑞牆山荘前に到着。バスで来るより30分以上節約できた。同乗した3人は瑞牆山へ日帰りとのこと。途中までは同じコースだが、お互い自分のペースでということで身支度を整えた人から三々五々出発した。

登山道は瑞牆山荘の向かい側から入る。登り始めは緩やかなシラカバ林の中を行く。砂利の林道を横切り、木組みの階段からやや急坂を登りきるとベンチのある見晴台に出る。再び緩やかな坂を登り富士見平に到着。数人が休憩していたが瑞牆山に向かう人ばかりのようだ。金峰山に向かうには時間が遅いのかもしれない。

富士見平周辺には黄色い花をつけたマルバダケブキが群生し、その間をアサギマダラ蝶がひらひらと優雅に舞っていた。

登り始めは晴れていたのに、だんだんと雲が増えてきたようだ。雨になるといやだなぁ、と思いつつ早々に出発する。飯盛山の山腹を巻きながら緩やかに登り、鷹見岩への分岐を見送り、少し下って開けた場所に出た。右下には大日小屋、左手にはテント場らしい広場がある。ここで小休止する。空を見上げると今にも一雨きそうな気配である。

大日小屋からやや急な登りが続く。道の両側にはシャクナゲの群生が現われ始めた。花の時期なら桃源郷のような光景が展開するのであろう。やがて樹林が切れて見晴台のような大日岩に到着した。天気が良ければゆっくりと景色が楽しめそうだが、あいにく分厚い雲に阻まれて展望は全くない。

登山道は大日岩の斜面を登るようについている。下は切り立った崖で滑落したら一巻の終わり、思わず慎重になる。しばらく石楠花や自然林の中を快適に進む。金峰山から下ってきた人と初めて出会う。この先の状況を尋ねると「まだまだ結構ありますよ」と厳しいお言葉をいただき少し焦る。

どうやら雨が降り出したようだ。かすかに遠雷も聞こえる。木々のお陰で雨露はかからないが、稜線に出たときのことを考えカッパを着込む。岩の多い急坂を登り、ようやく森林限界である砂払いの頭に出た。時刻は13時少し前。ここでお昼を食べる予定だったが、空模様が心配なの先を急ぐ。(ここから小屋まで焦りと不安で写真は全くなし)

楽しみにしていた稜線歩きも雲の中にいるようで周りの景色は全く見えない。軽快な道を想像していたが、大岩を伝っての上り下りが続き、ところどころ攀じるようなところもある。幸いにも雨は上がって岩の表面が乾いていたので助かった。

霧の中、道標やペンキの印が少なくコースがはっきりしない。行けども行けども岩の連続で目標物が見えない。さてはコースを外したかと一瞬肝が冷えたが、ほどなく金峰山山頂と小屋の分岐の道標を見つけ大いに安堵した。

ホッとしたとたん空腹をおぼえ、岩に腰掛けてようやくお弁当にする。雲の切れ間からは青空ものぞき、下界に陽が射しているのが望める。こうなれば山頂に行ってみるかと思ったのも束の間、再び雲が立ちこめてきて、とうとう雨が振り出してきた。早々にお弁当を片付け金峰山小屋に急いだ。

小屋で受付を済ませていると、間もなく年配の男性が到着した。部屋に上がればその方と隣同士だ。挨拶を交わしたとたん突然滝のような雨が降り出した。雷鳴も轟く。本当に間一髪だった。自分で言うのも何だが日頃の行いがこういうときに現われるのであろう。

夕食中に20人ほどの団体が到着した。既に雨は上がっていたが、私と同じコースを雷雨の中を登ってきたそうだ。見れば全員中高年の男女である。皆さん無事で何より。
夕食後、小屋の外に出てみれば、雨上がりの夕日に輝く金峰山が見える。ハイマツの間を吹き抜けてくる風が何とも心地よい。明朝の山頂行きを思うといやが応にも心が躍る。

小屋に戻ると隣の人はもう寝てしまったようだ。持参したワインで独り酒をやり、消灯時間の 20:30を待たずに寝てしまった。

ところで、金峰山小屋は大満足の一言に尽きた。夕食は鶏ムネ肉のソテーとサラダ。デザートにスイカも添えられ、グラス1杯の赤ワインのサービスがある。味もボリュームも満点。清潔な羽毛の布団が用意され、山小屋とは思えない素晴らしいもてなしに感激した。

明けて2日目。04時起床。団体さんは朝食前に山頂にご来光を拝みに行った。まったく元気である。小屋の外に出てみれば、昨日とは打って変わって気持ちのいい夜明けの空が広がっている。針葉樹の香気を含んだ山の空気が美味しい。

朝食は、山菜を混ぜ込んだご飯に味噌汁、佃煮や香の物が数種。美味しいのでご飯とお汁をおかわりした。小屋主さんに聞けば、いい天気も朝のうちで、昨日と同じですぐに雲が上がってくるとのこと。ペットボトルの水を購入し06時15分に出発した。

道標には小屋から山頂まで20分とある。楽勝かと思いきや岩また岩の急登で、山頂に辿りついたときは息が切れた。

山頂標識の隣にある一段高い岩からは360°の眺望が広がる。まずは眼下に瑞牆山の特徴ある岩峰とその向こうには八ヶ岳が。

五丈岩の向こうには南アルプス。

そして雲海のかなたには富士山。

普段登っている1,000m級の山とは全く別物の景色に言葉を失う。素晴らし過ぎる眺望を十二分に堪能した。

さぁ、そろそろ下山しようか。帰りは往路をピストンするだけなので気分は楽だ。ずっと先まで見通せる稜線を高度感を味わいながら砂払いの頭まで軽快に下る。土曜日ともあって登ってくる登山客も多い。昨日通ってきた道も見る向きが違えばまた新鮮である。そうこうしている間に大日岩まで来てしまった。

小屋主さんの言ったとおり空には薄雲がかかってきた。大日岩からの眺めは今日も今ひとつだ。大日小屋のテント場で小休止の後、一気にスピードアップして下山、10:05に瑞牆山荘に到着した。10:15の韮崎行きのバスに間に合ってしまった。

やってきたバスを見ると登山客が誰も乗っていない。運転手さん曰く、上野原で線路に倒木があり中央線が上下線不通。復旧まで時間がかかりそうとのこと。ならば急いで帰ることもない。途中の明野温泉太陽の湯でひと汗流してから韮崎に戻った。ダイヤ乱れ電車を乗り継ぎ、甲府からは臨時増発の各停あずさに乗れたので、かえってゆったりと座って帰ることができた。幸運続きの2日間であった。

(コースの記録)
1日目:瑞牆山荘09:45~富士見平小屋10:30~大日小屋テント場11:20-11:25~大日岩11:50~砂払ノ頭12:45~金峰山小屋分岐13:20-13:30~金峰山小屋13:50
2日目:金峰山小屋06:15~頂上 06:46-07:15~砂払ノ頭07:50~大日小屋08:50-09:00~富士見平小屋09:35~瑞牆山荘10:05

金峰山-瑞牆山荘から」への4件のフィードバック

  1. ハゲタカ 2010年8月23日(月) / 11:26 午前

    すばらしい景色に出会えましたね!!
    写真はコンデジでしょうが、デジイチで撮ってみたくなる風景ですね。
    でも、感動は伝わってきますよ。

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    • はしやん 2010年8月28日(土) / 5:39 午後

      ハゲタカさん、こんにちは。
      そうなんです。まさしくデジ一で撮るべき景色でした。
      山登りの腕がもう少し上がったら、写真との両立を考えようと思います。

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  2. ミナミ 2010年9月4日(土) / 8:27 午前

    うわー。
    すごいの一言。本格登山の魅力が伝わってきます。
    行った気分になれました。感謝。

    山小屋の食事も、想像しているものより、とっても美味しそう。
    (そこに食いつく食いしん坊のミナミなのでした)

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    • はしやん 2010年9月6日(月) / 8:28 午前

      ミナミさん、コメントどうもです。
      いやいや本格登山などとは、まだまだ・・・。
      少しだけ高山の雰囲気がお伝えできたのなら幸いです。
      小屋で一緒になった人に聞くと、ここの食事は特に素晴らしいそうで、これが普通と思うとガッカリすることもあるようです。

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