甲武信ヶ岳

8月最終土曜日に催される「甲武信小屋音楽祭」を楽しみにしていたが、近づく台風15号コンランを避けて、予定を繰り上げ8月29日に行ってきた。(2013/08/29-30)

平日なので西沢渓谷行きのバスは山梨市駅発しかない。登山口に着くのが10時40分過ぎといささか遅いがしようがない。敬服止まない田部先生の碑に一礼して、徳ちゃん新道をひたすら登る。

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高度を上げるにしたがい邪悪な様相の雲が出てきた。今にも降り出しそうで否が応にもペースが上がる。ようやく樹林を抜け崩落地。ここまで来たら後は楽勝。眼下に広瀬湖を眺めながらヤマザキのランチパックで昼ごはん。

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4時間ほどで小屋に着いた。中からは北爪さんのギターの音。音楽祭の練習に余念が無いようだ。ハイペースで疲れたので、山頂は明日にしてとりあえずビール。この日のお客さんは5名。静かな山懐の夜だった。

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明くる30日。朝食をいただきながら日の出を拝む。なかなか上天気だ。来年の音楽祭楽しみにしてるよと挨拶をして山頂に。かなり風が強い。雁坂峠まで稜線歩きは辛そうだし金峰の方角からは暗雲が流れてきそうな気配だ。同宿した年配の方は徳ちゃん新道をピストンとのこと。それではと、こちらは千曲川水源の道へと向かう。

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初めて歩く千曲川水源ルート。主脈から少し下って水源の碑。ここからの一滴がやがて信濃川という大河となって日本海に注ぐのだ。

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昨日の登りとは対照的な緩やかな道だ。シラビソの樹林帯が終わるとこんどは白樺のなかを下る。

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細く弱々しい水の流れはすぐに小さな滝を形成するまでになる。

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そして滑滝。もう立派に一人前の沢。やがて沢は怒濤のような水量の千曲川へと変わっていく。

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落葉松林を抜けてあっという間に毛木平。名産レタス畑の中をのんびり歩いて梓山。白木屋旅館の前から9時55分発のバスに乗り、名残惜しい2日間の山旅は終わった。

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おしまい。

甲武信小屋音楽祭に行ってきた

初めての甲武信岳行き。山歩きはもちろん、甲武信小屋で小屋番さんたちが催すライブを楽しみに、8月最後の週末に登ってきた。(2012/8/25-26)

塩山駅からバスで約1時間。終点の西沢渓谷で降り、敬服してやまない田部重治先生の石碑を拝見してから徳ちゃん新道で登る。ヤマレコのレポで覚悟はしていたものの、噂にたがわぬ登り一辺倒の道。午後からの雷が心配でややハイペースだったこともあり、甲武信小屋に着いたときにはよれよれ状態。甲武信ヶ岳の山頂は明日の楽しみに取っておこう。

夕方までビールや缶酎ハイをやりながらのんびりと過ごし、夕食の後は、いよいよ北爪さんとその仲間によるライブ。北爪さん、ブルースが似合いそうな渋いボーカルでなかなか芸達者だ。観客の大半は常連さんらしい。ライブの後で打ち上げがあったようだが一見の自分は少々気後れ。明日もあるので2階に引き上げカップ酒で独酌して早々に寝た。

明けて2日目。小屋を後に甲武信ヶ岳の山頂に向かう。国師ヶ岳から金峰山、その向こうは中央アルプスの山々。まったく素晴らしい展望に後ろ髪を引かれる思いで十文字峠へと出発する。これぞ奥秩父といった苔むす針葉樹林の森の中を、登り下りを繰り返しながらのんびりと下って、ようやく十文字峠に着いた。十文字小屋でビールでも一杯と思ったがあいにく小屋番さんは留守。一服してから毛木平へと八丁坂を下る。昨日からの疲れでつまずきそうになりながら沢沿いの道を下り、水量豊富な千曲川にかかる橋を渡って毛木平の駐車場に着いた。楽しかった2日間の山歩きもこれで終わり。照りつける日差しの下、レタス畑が広がる戦場ヶ原のアスファルト道を梓山へと向かった。

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(コースの記録)
1日目/塩山駅8:30=西沢渓谷入口9:40~徳ちゃん新道入口10:15~近丸新道分岐11:45~(途中昼食)~木賊山手前の分岐13:15~甲武信小屋13:45
2日目/甲武信小屋06:00~甲武信ヶ岳06:20~三宝山07:00~尻岩07:55~大山08:30~十文字小屋09:00~毛木平駐車場10:15~梓山11:25(白木屋旅館で入浴・休憩)12:58=信濃川上駅13:28

丸川峠から大菩薩嶺

静かな大菩薩を味わおうと丸川峠から登ることにした。(2012/08/19)

お盆休みも最終日、塩山駅のバス乗り場に登山客は少なく余裕で座れた。裂石ルートの途中、ゲートのある駐車場から分岐して丸川峠に向かう。林道の終点でみそぎ沢から離れ急坂の尾根筋をひたすら登る。危ないところや迷うようなところはないが生い茂った木々で見晴らしはほとんどなく単調な道がつづく。急な岩場を登りきり緩やかな勾配の笹原を進んでいくと丸川荘の屋根が見えた。

丸川荘では小屋主さん?がなにやら大工仕事で忙しそう。声をかけづらいのでそのまま素通りして大菩薩に向かう。茅トの道を少し上がると樹林帯に入る。針葉樹の木々と苔むした道、奥秩父の雰囲気が漂う道だ。尾根のピークはほとんど巻いてアップダウンがない緩やかな登りが延々続く。

すれ違う登山者はほとんどいない。殷賑極める大菩薩の中ではマイナールートらしい。大きくピークを巻いて岩まじりの道を登りきると、ようやく大菩薩嶺の頂上。見通しのない頂上はそそくさと後にして、ビールを求め、唐松尾根を福ちゃん荘目指して矢のように下った。

金峰山-瑞牆山荘から

1年前の8月、伊勢原の日向山に登ったのをきっかけに始めた山歩き。今ではほぼ毎週のように山に出かけているが、未だ日帰りの山しか経験していない。ちょうど1年になったのを機に、かねてより念願だった山小屋泊まりを体験しようと山梨県と長野県に跨る金峰山(2,599m)に登ってきた。(2010/8/6〜7)

八王子06時29分発の松本行き普通列車に乗り韮崎駅に08時28分に着く。駅前で瑞牆山荘行きのバスを待っていると、隣に並んだ人からタクシー相乗りの誘いを受けた。4人揃えばバス代と同じ1人2,000円で行くという。これ幸いと一つ返事で応じた。聞けばここでは相乗りは半ば常識らしい。

09時30分に瑞牆山荘前に到着。バスで来るより30分以上節約できた。同乗した3人は瑞牆山へ日帰りとのこと。途中までは同じコースだが、お互い自分のペースでということで身支度を整えた人から三々五々出発した。

登山道は瑞牆山荘の向かい側から入る。登り始めは緩やかなシラカバ林の中を行く。砂利の林道を横切り、木組みの階段からやや急坂を登りきるとベンチのある見晴台に出る。再び緩やかな坂を登り富士見平に到着。数人が休憩していたが瑞牆山に向かう人ばかりのようだ。金峰山に向かうには時間が遅いのかもしれない。

富士見平周辺には黄色い花をつけたマルバダケブキが群生し、その間をアサギマダラ蝶がひらひらと優雅に舞っていた。

登り始めは晴れていたのに、だんだんと雲が増えてきたようだ。雨になるといやだなぁ、と思いつつ早々に出発する。飯盛山の山腹を巻きながら緩やかに登り、鷹見岩への分岐を見送り、少し下って開けた場所に出た。右下には大日小屋、左手にはテント場らしい広場がある。ここで小休止する。空を見上げると今にも一雨きそうな気配である。

大日小屋からやや急な登りが続く。道の両側にはシャクナゲの群生が現われ始めた。花の時期なら桃源郷のような光景が展開するのであろう。やがて樹林が切れて見晴台のような大日岩に到着した。天気が良ければゆっくりと景色が楽しめそうだが、あいにく分厚い雲に阻まれて展望は全くない。

登山道は大日岩の斜面を登るようについている。下は切り立った崖で滑落したら一巻の終わり、思わず慎重になる。しばらく石楠花や自然林の中を快適に進む。金峰山から下ってきた人と初めて出会う。この先の状況を尋ねると「まだまだ結構ありますよ」と厳しいお言葉をいただき少し焦る。

どうやら雨が降り出したようだ。かすかに遠雷も聞こえる。木々のお陰で雨露はかからないが、稜線に出たときのことを考えカッパを着込む。岩の多い急坂を登り、ようやく森林限界である砂払いの頭に出た。時刻は13時少し前。ここでお昼を食べる予定だったが、空模様が心配なの先を急ぐ。(ここから小屋まで焦りと不安で写真は全くなし)

楽しみにしていた稜線歩きも雲の中にいるようで周りの景色は全く見えない。軽快な道を想像していたが、大岩を伝っての上り下りが続き、ところどころ攀じるようなところもある。幸いにも雨は上がって岩の表面が乾いていたので助かった。

霧の中、道標やペンキの印が少なくコースがはっきりしない。行けども行けども岩の連続で目標物が見えない。さてはコースを外したかと一瞬肝が冷えたが、ほどなく金峰山山頂と小屋の分岐の道標を見つけ大いに安堵した。

ホッとしたとたん空腹をおぼえ、岩に腰掛けてようやくお弁当にする。雲の切れ間からは青空ものぞき、下界に陽が射しているのが望める。こうなれば山頂に行ってみるかと思ったのも束の間、再び雲が立ちこめてきて、とうとう雨が振り出してきた。早々にお弁当を片付け金峰山小屋に急いだ。

小屋で受付を済ませていると、間もなく年配の男性が到着した。部屋に上がればその方と隣同士だ。挨拶を交わしたとたん突然滝のような雨が降り出した。雷鳴も轟く。本当に間一髪だった。自分で言うのも何だが日頃の行いがこういうときに現われるのであろう。

夕食中に20人ほどの団体が到着した。既に雨は上がっていたが、私と同じコースを雷雨の中を登ってきたそうだ。見れば全員中高年の男女である。皆さん無事で何より。
夕食後、小屋の外に出てみれば、雨上がりの夕日に輝く金峰山が見える。ハイマツの間を吹き抜けてくる風が何とも心地よい。明朝の山頂行きを思うといやが応にも心が躍る。

小屋に戻ると隣の人はもう寝てしまったようだ。持参したワインで独り酒をやり、消灯時間の 20:30を待たずに寝てしまった。

ところで、金峰山小屋は大満足の一言に尽きた。夕食は鶏ムネ肉のソテーとサラダ。デザートにスイカも添えられ、グラス1杯の赤ワインのサービスがある。味もボリュームも満点。清潔な羽毛の布団が用意され、山小屋とは思えない素晴らしいもてなしに感激した。

明けて2日目。04時起床。団体さんは朝食前に山頂にご来光を拝みに行った。まったく元気である。小屋の外に出てみれば、昨日とは打って変わって気持ちのいい夜明けの空が広がっている。針葉樹の香気を含んだ山の空気が美味しい。

朝食は、山菜を混ぜ込んだご飯に味噌汁、佃煮や香の物が数種。美味しいのでご飯とお汁をおかわりした。小屋主さんに聞けば、いい天気も朝のうちで、昨日と同じですぐに雲が上がってくるとのこと。ペットボトルの水を購入し06時15分に出発した。

道標には小屋から山頂まで20分とある。楽勝かと思いきや岩また岩の急登で、山頂に辿りついたときは息が切れた。

山頂標識の隣にある一段高い岩からは360°の眺望が広がる。まずは眼下に瑞牆山の特徴ある岩峰とその向こうには八ヶ岳が。

五丈岩の向こうには南アルプス。

そして雲海のかなたには富士山。

普段登っている1,000m級の山とは全く別物の景色に言葉を失う。素晴らし過ぎる眺望を十二分に堪能した。

さぁ、そろそろ下山しようか。帰りは往路をピストンするだけなので気分は楽だ。ずっと先まで見通せる稜線を高度感を味わいながら砂払いの頭まで軽快に下る。土曜日ともあって登ってくる登山客も多い。昨日通ってきた道も見る向きが違えばまた新鮮である。そうこうしている間に大日岩まで来てしまった。

小屋主さんの言ったとおり空には薄雲がかかってきた。大日岩からの眺めは今日も今ひとつだ。大日小屋のテント場で小休止の後、一気にスピードアップして下山、10:05に瑞牆山荘に到着した。10:15の韮崎行きのバスに間に合ってしまった。

やってきたバスを見ると登山客が誰も乗っていない。運転手さん曰く、上野原で線路に倒木があり中央線が上下線不通。復旧まで時間がかかりそうとのこと。ならば急いで帰ることもない。途中の明野温泉太陽の湯でひと汗流してから韮崎に戻った。ダイヤ乱れ電車を乗り継ぎ、甲府からは臨時増発の各停あずさに乗れたので、かえってゆったりと座って帰ることができた。幸運続きの2日間であった。

(コースの記録)
1日目:瑞牆山荘09:45~富士見平小屋10:30~大日小屋テント場11:20-11:25~大日岩11:50~砂払ノ頭12:45~金峰山小屋分岐13:20-13:30~金峰山小屋13:50
2日目:金峰山小屋06:15~頂上 06:46-07:15~砂払ノ頭07:50~大日小屋08:50-09:00~富士見平小屋09:35~瑞牆山荘10:05